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今月の詩

孤独と扉をあけて

2019.10.01

詩/岡本彩花

息狂しい夜だからクロネコになって、
月明かりを捕まえに行くことにした。

路地裏のラクガキの声が聞こえてくる。
モノクロのマジョリティの群れのなかで、
口笛を吹いて歌をうたう。
だれかが描いたクラドニ図形を塗り替えながら歩く。

そんな夜もわるくないと思ってしまうのは、
街灯にしがみついている蛾と目があったせいだろうか。

星屑が降る。

どうかこの長い酸欠にエンドロールが流れませんように、

この黒が滲んでしまいませんように。

選評/高橋源一郎

見えないものを見る

 最初に読んだときは、ワォッ、なんか感じのいい詩だなと思った。なので、途中に出てくる「クラドニ図形」の意味を知らないまま読んだのだ。ちょっと不思議な図形、ぐらいな感じで(すいません、いい加減で)。でも、知ってますか、この意味。ウィキペディアによれば「金属・プラチスック・ガラス・ボウルなどにピンと張ったラップなどの平面にスピーカーなどで振動を与え音程を変えると、共鳴周波数において平面の強く振動する部分と、振動の節となり振動しない部分が生じる。ここへ例えば塩や砂などの粒体を撒くと、振動によって弾き飛ばされた粒体が集まることで、幾何学的な模様が観察される」と書いてある。見えないもの(音)が見えるもの(図形)になる、のである。
 というわけで、これを書く前に、中三の長男に手伝ってもらって(実験が得意なので)、スピーカーを引っ張りだして、「クラドニ図形」を作ってみた。いいね、感激!
 多くのものは見えない。闇でもないのに。もしかしたら、ぼくたちは、明るい世界だと思っているのは、ほんとうは闇の中をさまよっているのかもしれない。みんな、この世界の(闇でも見える)クロネコにならなくっちゃね!

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