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今月の詩

2019.05.01

詩/細見洋平

腹がへったので外に出ると山が落ちていた

よくできた模型かと拾いあげると
小さな木々は生きている感触がある

珍しいものが落ちているものだと
ポケットに突っ込んで
そのまま食事に出かけた

家に帰って山を取り出してみると
拾った時あれほど青々としていた山は
どうも元気がない
木々もすっかりしなってしまった

急いでネットで調べると物知りの方がいるものだ
山の育て方が載っていた

水を入れた紙コップに浮かべるとよいらしい

私は台所から水をいれた紙コップを持ってきて
こんなものが浮かぶのかと、そっとおくと
山は、ぷかぷかと浮いた

選評/高橋源一郎

細見さんは、腹が減って食事に出かけようとして、落ちていた「山」を拾ったみたいだ。ものすごくうらやましい。この詩を読んでから、食事に出かけるたびに、何か落ちてないかと足元を注意するようになった。ぼくは鎌倉に住んでいるのだけど、たいしたものは落ちてない。アリの行列かと思ったら、イタリア人の観光客の集団か修学旅行に来ている中学生だ。そんなの持ち帰って家の中を歩き回られたら困るので無視した。薄幸の美女とか落ちてないだろうか。山が落ちてたんだから、海が落ちてる可能性もあると思って歩いていたら、海岸に出てしまった。こんなの持ち帰れない。細見さんに拾えてぼくに拾えないのはなぜだろう。腹が減ってから出かけるせい? 詩を読んでこんなに考えこんだのは久しぶりだよ。

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