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Now, Then!

神話と植物の物語ー南イタリア紀行ーVol.3 後編

2019.07.05

文・写真/乾 ゆうこ

では今度は、ナポリから船で海上へ出ましょう! 向かうのはカプリ島(Isola di Capri)。神秘的な「青の洞窟」が有名ですが、他にもたくさんの美しい岩や洞窟のある、青く、青く、輝く海に浮かぶ美しい島です。

島に着くと、まずは船着場からケーブルカーで岩山の山頂へ。あちこちに、しかも大々的に香水の広告があって、とっても気になる!

かなり急な傾斜を登るケーブルカーの終点で降りて歩いて行くと、やがてサン・ジャコモ修道院(La Certosa di San Giacomo)に到着しました。

なんと、修道院の一角ではファッションの展示もやっていました。

ここは14世紀に建てられた修道院ですが、1380年にジョヴァンナ・ダンジョ・ナポリ女王の訪問が決まった折、修道院長は女王を迎えるため島の美しい花々を飾りました。そしてその後、花を活けていた水が神秘的な香りになっていることに気づきます。僧院の錬金術師が調べると、それはカプリ島のカーネーションの花の香りだということがわかりました。
これがカプリ島最初の香水といわれています。

やがて20世紀に、古来の香水の調合法をみつけた修道院長が伝説の香水を再現します。こうして、香水製造所が誕生しました。その名も「カルトゥージア(Carthusia) 」(修道院)。

「修道院」という名をもつ香水店の絵が可愛すぎて、もうメロメロです。

人々がのんびりと寛ぐ、植物豊かな光あふれる島。ここは天国でしょうか?
古の人たちもきっとそう感じて、楽園を求めて島へやって来たに違いない。
行ってしまって帰ってこられなくなる南の島。そういう地はほんとうにあるんだね、と、確信してしまうのでした。

そして、新鮮な海の幸山の幸たっぷりの、じつに美味しい食事が待っていました。
さらに、イタリアの食事に欠かせないワインの豊富さ。
それではワインをつくるブドウにまつわる話を、最後にご紹介しますね。

ワインといえば、ブドウの蔓を冠のように頭にいただく、葡萄酒の神ディオニューソス。ローマ世界ではバッカスといいます。きっと、酒神バッカスのほうが馴染みのある名前でしょう。

彼はゼウスの息子ではあるけれど、母親はゼウスの妻ではありません。例のごとくゼウスの妻ヘーラーの怒りから、生まれる前に母は死んでしまいました。(じつのところ、ゼウスの気の多さはひどすぎますからね!) そして誕生するまで、なんとゼウスの腿のなかで育つという、異色の出自をもちます。

ディオニューソスは生まれてからも、ヘーラーに見つからないようニンフたちの手で育てられました。彼は小さいころから、ブドウの生える洞窟などで遊んでいたといいます。
やがてこの神は、幼いころからよく知るブドウでお酒を作ることを発見します。そして世界中を放浪して、人間にブドウの栽培法を教えたのだそうです。

毒にも薬にもなるブドウのお酒、ワインで熱狂的になる人々。陶酔、酩酊、狂乱。
それらはいつの時代にも見られるものですけれど、ディオニューソス信仰はかなり派手なものとなったようです。

 
さて振り返ると、旅の途上のそれぞれの土地は、真昼の夢のようにも神話のなかのようにも思えてきそう。
南イタリアの歴史の古層はあちらこちらにのぞいていて、しかも物凄く魅力的にウィンクまでしています。うっかりしていると旅だかお話だか、どれがリアルかわからなくなる? はたまた帰れなくなる?……なんていうこともあるかもしれませんね。
樹々や花々はそ知らぬふりして風に歌いながら、土地の精霊たちと戯れながら、夢へ、旅へ、神話の世界へ、それとなく私たちを誘っている~のかもしれません。

※Vol.3の前編はこちら。
……
さて6回に渡っての、南イタリアを巡りながらの神話と植物のお話、いかがでしたでしょう。このシリーズは今回で終わります。
お読みくださって、ありがとうございました!
またどこかの土地でお目にかかれるときがあれば幸です。

クリエイターの紹介

乾 ゆうこ

ライター

ホリスティックハーバルセラピスト。大学時代に花椿編集室に在籍し、「ザ・ギンザ・アートスペース」(当時の名称)キュレーターを経て、ライター・エディターとして活動。故・三宅菊子氏のもと『フィガロ・ジャポン』『家庭画報』などでアート・映画・カルチャーを中心に担当。出産を機に伝統療法や自然療法を学び、植物の力に圧倒される。「北イタリア植物紀行(全4回)」「アイルランドから〜ケルト植物紀行」(ともに『クレアボー』フレグランス・ジャーナル社)など執筆。生活の木(表参道校)では不定期にクラスを開催している。

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