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Now, Then!

神話と植物の物語ー南イタリア紀行ーVol.2 後編

2019.05.07

文・写真/乾 ゆうこ

神話の世界から、いったん現代のレッチェの街へ戻りましょう。街の真ん中には、古代ローマの円形劇場。古い建物と一緒に新しい時代の建物や、新しい表現が共存します。
人々は歴史の古層の上に、今を生きています。古い文化を大事にしながら、今を生きることは素敵なことだな、と、人の在り方にも思いを巡らせてみたり。
じっさい、イタリアの人たちは自分の街の歴史をよく知っていて、誇りにもしています。旅行者におすすめの場所を尋ねられると、自分の生まれたところをすすめたりもするそうですよ。流石ですね!

そして、街の白い石肌に夕陽がピンクに映えて、だんだんと暗闇に溶け込んでいく頃には、空にハートの形の電球も浮かんでいました。

お腹もすく頃には、細い路地のテラス席でおしゃべりする人々も増えています。いつの間にかサックスを吹く音楽家も現れて、街はだんだんと賑やかに。

プーリア州のオリーヴオイルはすばらしく、野菜は新鮮、乳製品の産地なのでチーズは格別、海が近いので海産物も豊かです。当然、食べ物は美味しい!

南イタリアならではのパスタのオレッキエッテ。耳の形、とよくいうけれど、小さなスプーンのすくうところみたいな形で、ソースがよくからまります。ベースはもちろんトマトソース。バジルソースと食べ比べます。カポナータ(のようなもの)、ズッキーニとお米のパイ、など。セコンド・ピアット(メインとなる第二のお皿)に行く前にお腹いっぱいになってしまいます。

じつは、プーリア州というのはとても食事の豊かな場所です。イタリア国内で、州のほとんどが平原なのは2つの州だけ、プーリア州はそのひとつです。案外、山がちな国土なのですね。そして平原が多いということは、農作物がより豊かということでしょう。

プーリア州の食事の特色として、前菜、アンティパストがたくさんきます。レッチェで入ったお店はとてもカジュアルなお店だったので、そのときはまだ〈プーリアの前菜〉の威力に出会えませんでしたが、のちにターラント(Taranto)という港町で入ったお店では、〈お店の前菜〉として、なんと7種類くらいの前菜が運ばれてきました!

最初は、あれ? 間違えたかな、と思ったりしましたが、でも珍しいし美味しいし、喜んでどんどん食べていましたが、我に返って途中で聞いてみると、やっぱり全部前菜だというので驚いてしまいました。
別のお店では、地元の人と思しき人たちが前菜をそれぞれに食べて、そのあとデザートにしていましたが、なるほどそういう食べ方でも量的に大丈夫なんだな、と納得。美味しいものがあれば、みんな幸せ、なのはどこの国でも同じ。楽園への入り口はこんなところに開いているのですね。

今回は食に深くかかわる植物が続いたので、最後にもうひとつ、食べられる植物のお話を紹介しておきますね。ザクロのお話です。

豊穣の女神デーメーテールの美しい娘ペルセポネーは、ある日、冥界の神ハーデースに連れ去られます。母は神々の神ゼウスに訴えますが、訴えを聞いてもらえないことに怒って、オリュンポスを去りました。
豊穣の女神のいない大地は実り少なくなってしまうのです。そこでやっとゼウスはハーデースに、娘を返すようにと言います。神々の神の命令に背くことはできませんから、ハーデースも仕方なくペルセポネーを返すことを承諾します。しかし、彼女の帰り際に、瑞々しく美味しそうなザクロをすすめるのです。

つやつやと美しく輝くザクロの粒。ペルセポネーは幾粒か、口にいれてしまうのでした。けれども、冥界の食べ物を口にした者は、冥界に暮らさなければならないという、神々の決まりがありました。そのためペルセポネーは、1年のうち、食べた粒の数だけ冥界の女王として地下に留まり、それ以外を地上で暮らすということになります。ペルセポネーが地上に戻っている間は、母デーメーテールも喜び、大地は豊穣になるのだそうです。

街中の公園にも、その実がなっていました

どこかビザンティン風の趣のある公園には、夕暮れに寛ぐ人々の姿がありました。公園の植物も大きくて、ヤシなどの南国風情のものも多く、やっぱり南なのだなと植物たちに教えられます。

次回はナポリに戻って、近くの遺跡のあるポッツォーリや、ナポリから眩しい海へ船出して、まさに楽園のようなカプリ島を訪れます。

【このお話の前編はこちらから】→神話と植物の物語ー南イタリア紀行ーVol.2 前編

クリエイターの紹介

乾 ゆうこ

ライター

ホリスティックハーバルセラピスト。大学時代に花椿編集室に在籍し、「ザ・ギンザ・アートスペース」(当時の名称)キュレーターを経て、ライター・エディターとして活動。故・三宅菊子氏のもと『フィガロ・ジャポン』『家庭画報』などでアート・映画・カルチャーを中心に担当。出産を機に伝統療法や自然療法を学び、植物の力に圧倒される。「北イタリア植物紀行(全4回)」「アイルランドから〜ケルト植物紀行」(ともに『クレアボー』フレグランス・ジャーナル社)など執筆。生活の木(表参道校)では不定期にクラスを開催している。

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