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Now, Then!

世界サウナ紀行 Vol.9 Destination : Cologne (Germany) ②

2019.01.31

文、写真/大智由実子

イラスト/ほりゆりこ

 前回クラウディウス・テルメで初のドイツサウナの洗礼を受け、そのどん欲なまでの快楽の追究にただただ頭が下がる思いを抱いたのですが、実はケルンにはそれよりもさらなる楽園があったのです。そこはまるで大人の“裸のテーマパーク”といった感じの巨大施設でした。
 そこを知ったのは、ケルンに着いて初めて入ったビアパブでのこと。友人と私はともにお酒に弱くほとんど飲めないのですが、せっかくドイツに来たのだからちょっとだけドイツビールを楽しもう、ということで地元の人たちに人気の老舗ビアパブに行ってみたのです。そこは日本人どころか、観光客はゼロの地元民でぎゅうぎゅう詰めの店内で、相席になった隣のほろ酔いドイツ人に「何をしにドイツに来たのか?」と聞かれ「サウナに入りに」と即答したら面白がられ、「どこに行くつもり?」との問いに「クラウディウス・テルメに行くよ」と言うと「あそこは子どもの行くところだ。それよりもっと良いサウナがあるよ」と言って教えてくれたのがメディテラーナ(Mediterana)というサウナ施設でした。
 それでも翌日「子どもの行くところ」のクラウディウス・テルメに行ってみたら、とんでもなく良いサウナ施設で(確かに温水プールゾーンは子どもや若い子たちが多かった気がしますが)、「これ以上に良いサウナ施設があるの?」と半信半疑な気持ちと、「これ以上の快楽を知ってしまったらもう日本へは戻れないのではないだろうか……」という恐れにさいなまれたのですが、結局私たちのどん欲な好奇心の方が勝ち、その翌日にはメディテラーナへ足を運んでいました。

好奇心を携え、地元民オススメサウナへ!

 メディテラーナは、ケルン中心部から電車で20分程、さらに駅から徒歩で10分程歩いた郊外にあります。駅の周辺は郊外感が漂い、駅から森の中と見間違えるような道を10分程歩きます。「ほんとにこんなところにサウナ施設があるの?」と心細くなってきたところにドーーン! といきなり宮殿のような巨大な建物が見えてくるのです。そこが“裸のテーマパーク”メディテラーナなのでした。

美し過ぎる吹き抜けの中央ラウンジ。
まるで王族のヴィラのようです。

 外観も内観もまるでどこかの国の王族のヴィラのようにオリエンタルでゴージャスです。各所にラグジュアリームードが漂っており、お客さんも落ち着いた大人のカップルが中心。まずは受付でもらった館内マップを見てみると、広大な施設内にさまざまな種類のサウナがあちらこちらにあって一瞬意識が遠のきます。というか、完全に迷子になってしまうレベル。だってそこはなんと13種類のサウナと9つの温泉・プールに、各所に宮殿の寝室のような休憩所があるという常軌を逸したスペックの施設なのです。
 もうどこから行って良いのかわからなくなって途方に暮れた私たちはインフォメーションのところに各サウナ室でのアウフグースのタイムスケジュールが書かれているボードを発見し、まずは一番近い時間のアウフグースを目指すことに。館内マップを手にお目当てのサウナ室へ行く途中、ラグジュアリーなプールで紳士が裸でくつろいでいたり男女がいちゃいちゃしていたりする光景が目に飛び込んできます。一瞬「わお!」となりましたが前日のクラウディウス・テルメで羞恥心を捨て去り快楽の園へと飛び込んだ私たちにもう怖いものはありませんでした。そうです、ここでももちろんサウナエリアは男女混浴真っ裸です。私たちは早速持参してきたバスローブと羞恥心を脱ぎ捨ててサウナ室の中へ入りました。アウフグースはやはり大人気で開始時間直前には広いサウナ室のベンチはぎゅうぎゅう詰めです。ワクワクしながら待っているとようやくマイスターが手に桶と柄杓を持って現れました。お客さん達もみんな「いよっ!待ってました!」と言わんばかりの熱い視線を注ぎます。
 ここではマイスターはまるでヒーローのようです。ドイツ語で何かしゃべっては会場を盛り上げつつ和やかな雰囲気にしていきます。そしていよいよアウフグースが始まると、先程までの和やかな雰囲気とは対照的な激しい熱風が送られてきて発汗が促されます。お客さんたちもみんな目をつぶって「あ〜」とか「う〜」とか静かなうなり声を上げつつも気持ち良さそうな表情をしています。

またも知ってしまった…至福のサウナ

 第1ラウンドが終わった頃にミントフレーバーのソルトが配られ、それを身体にぬりこんでから第2ラウンドが始まります。ロウリュをする水にもミントのエッセンシャルオイルが入っているのでスースーする肌感覚と熱風とでもう熱いんだか冷たいんだかよくわからなくなってきます。大量発汗してフラフラになりそうな頃に盛大な拍手と共にアウフグースが終わり、皆さん外のシャワーに直行。ここには広い施設内にいわゆる日本にあるような冷たい水風呂はひとつしかなく、他は温水プールとシャワーが各所にあります。あとこれはドイツ流の身体の冷まし方なのかもしれませんが、シャワーのそばにかき氷のような細かい氷の山が盛ってあります。シャワーで汗を流した後、たいがいのドイツ人はその氷を身体にぶちまけて熱を冷まします。そしてバスローブを羽織り休憩室でゆったりと休みます。

ヒマラヤ岩塩に覆われたサウナ室の中央に鎮座する仏像。
手前に置いてある様々な楽器で優美な音を奏でてくれます。
中央に本物の焚き火があり、足湯をしながら焚き火をぼーっと見つつ発汗できるヒーリング効果最強のサウナ室。

 他にもたくさんのサウナ室があるのですが、全てにテーマがあり趣向の異なるサウナ室で、それぞれテーマに合わせたオリジナリティ満載のアウフグースやパフォーマンスイベントが行われています。中でも面白かったのは、壁から天井まで全てがヒマラヤ岩塩で覆い尽くされ、中央に仏像が置かれているオリエンタルムードあふれるかなり広いサウナ室で、マイスターが鐘や鈴、ドラや音叉などの音を鳴らしてくれます。その厳かな音色に静かに耳を傾けながら各々瞑想をするというセレモニー。まるで寺院にいるかのような心の落ち着きを感じながら深い瞑想ができるのですが、サウナ室の中なので気付いたらけっこう発汗もしていました。チャクラも汗腺も同時にぱっかーんと開く感じでとてもスッキリします。
 もちろんここにもバスローブのまま食事のとれるレストランやカフェがあり、料理も絶品です。色んな種類のサウナに入り、趣向をこらしたアウフグースを受け、ゴージャスなラウンジで休憩し、お腹が空いたらレストランで美味しい料理を頂く。ここではまるで王様になったような時を過ごせます。ただし、裸の王様ですが(笑)。

メディテラーナ外観。
念のため言っておきますがここは温浴施設です。

 メディテラーナは本当に一日中いても飽きることは無いどころか、一日で全てのサウナ室をまわりきることは不可能なほどです。実際に私たちもほぼ丸一日をそこで過ごしましたがまだまだ制覇できていないサウナがあり、その全貌はわかっていません。冒頭で“裸のテーマパーク”と称しましたが、いや、ここは実は竜宮城だったのではないか? とさえ思い始めました。営業終了時間ギリギリまで堪能し、夜遅くに中心部のホテルに帰ってきた頃にはメディテラーナでの一日がまるで夢物語のようで記憶もおぼろげ。あそこだけ時の流れが止まっていたのかもしれません。
 しかしケルンという都市だけでもレベルの高い優良サウナ施設が2つもある恐るべしドイツ。「もっと他の都市のサウナ施設も掘りたい!」という欲望がムクムクと湧いてきました。知らぬ間に私も快楽の底なし沼へとズブズブ入っていってしまっているようです……ムムッ!ドイツサウナ、要注意です!

※写真はすべてTwitter:@mediteranaより転載。

Mediterana GmbH & Co. KG

Saaler Mühle 1
51429 Bergisch Gladbach-Bensberg

Tel: +49 (0) 2204 20 20
https://www.mediterana.de/

クリエイターの紹介

大智由実子

ライター

洋書のディストリビューションを行うMARGINAL PRESSを立ち上げ、世界各国のインディペンデントマガジンやアートブックを日本に紹介。2016年よりサウナの魅力にはまる。趣味は世界のサウナ巡り。サウナ・スパ健康アドバイザーの資格も持つ。
https://www.marginal-press.com/

ほりゆりこ

イラストレーター

1978年大阪生まれ。デザインやイラストの本職のかたわら「大自然と一体化」をテーマに主に関西を拠点に活動するTent Sauna Partyに所属。著書にタナカカツキ(日本サウナ・スパ協会公認)との共著『はじめてのサウナ』がある。また、リトアニアのサウナハットアーティスト、ヴィクトリアからワークショップを受け「TSP式サウナハット」を考案・制作。お気に入りのサウナは「延羽の湯・鶴橋店」
http://tentsaunaparty.com/

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