東京喫茶部「トロワ・シャンブル」
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Now, What!

東京喫茶部「トロワ・シャンブル」

2017.08.25

文/小谷 実由

写真/島田 大介

もうすぐ夏が終わる、私の今年の夏はなんだか夏らしくなかった。今日も雨、梅雨時期のように毎日続いている。雨が降っている日は目覚めが良くない。しかし、眠い目をこすりながらも無性に足を運びたくなったのは下北沢にある「トロワ・シャンブル」。

朝の下北沢はなんだか静かで違う街みたいだった。この時間にここに訪れるのは初めて。店に入るともうお客さんがちらほら。眠そうにトーストを食べる人、この人何時でもいるな!と驚いてしまった常連さんなど。時間によってお客さんも空気も変わる。

いつも訪れている時間は午後。午後のもったりとゆるく流れる時間に比べて、朝はまた違う清々しさがある。一本のまっすぐな線が伸びているような空気、でも決して緊張感があるわけじゃない、ただとても澄んでいる。まるでマスターの人柄がこの空間に染み渡っているような、、マスターはなんだかシャイそうで、でもすごくまっすぐな瞳で真面目そうな人である。

今日もお気に入りの奥の三角コーナーの席が空いていてホッとする。ここはお店の様子がなんとなく見渡せて、窓があって、私がいつも求めている喫茶店の”第2の自分の部屋感”がとても感じられる席だ。今日はシナモントーストを食べようと決めていた。

シナモントーストは、この喫茶店を教えてくれた友人のお気に入りのメニュー。甘くて少し塩気がきいたシナモントースト。クリームも甘さ控えめであっという間に食べてしまった。友人はよくここに朝食を食べに来ている。今日も来ていたりして、なんて思いながら来てみたが、残念ながら今日は朝早くから仕事らしい。今度は待ち合わせをして一緒に朝食を食べよう。

トロワ・シャンブルといえば、ミルクと珈琲が二層に分かれたオレ・グラッセ。一年中あるメニューだけど私の中では夏の定番。だけど、今年の夏に飲むのは今日がはじめてだった。久しぶりに頼んだオレ・グラッセはやっぱり綺麗に二層になっていて混ぜるのがもったいない。

飲んだ瞬間、一気に夏が押し寄せた。一昨年の夏や去年の夏、夏の思い出が総集編のように頭の中をぐるりと駆け巡る。今年の夏はこれを飲んでいなかったから夏らしくなかったのでは……? オレ・グラッセの偉大さよ、御見逸れいたしました。

一方で、こんなにも重要視しているオレ・グラッセを放っておいて私はこの夏何を飲み続けていたかというと、フレッシュジュースである。いつもカウンターでかかげる様に積まれ、存在感たっぷりのグレープフルーツ。甘酸っぱく、すっきりしたその味はもやもやとした私の夏を支えてくれていたのだった。これからはこの2つの間で毎度心が揺れるのだろう、夏の浮気な気持ちはここで使い果たしてしまうに違いない。

今日は今年たくさん喫茶店に着て行ったワンピースをまた着た。このワンピースはファッションブランドIamIと共に”喫茶店に行きたくなる”をテーマに作ったワンピース。ダークトーンのネイビーが木目が印象的な店内に映える。来年の夏もこのワンピースと共にたくさん喫茶店を訪れるだろう。

もうすぐ夏が終わる。私の今年の夏はなんだか夏らしくなかった。夏らしくなかった理由がなんとなくわかったような気持ちで、少し後悔を感じながらもたまにはこんな夏も良かったのかもしれないと思い込むことにする。どうやら私の気持ちはもう秋へと向かっているらしい。

 

トロワ・シャンブル
TEL:03-3419-6943
住所:東京都世田谷区代沢5-36-14 湯浅ビル 2F
営業時間:09:30~23:00
不定休

クリエイターの紹介

小谷 実由

モデル

1991年、東京生まれ。ファッション誌やカタログ、広告でモデルとして活躍。趣味は純喫茶巡り。「#喫茶部」として、オリジナルグッズを制作するなど、多くの人に喫茶店の魅力を伝える普及活動にも力を入れている。https://www.instagram.com/omiyuno

島田 大介

映像ディレクター

film maker / photographer / Qotori film Inc. 代表。数々のミュージッククリップ・コマーシャルフィルムを演出。小松菜奈主演の短編映画「ただいま。」監督。ダンサー森山開次氏の展覧会、ブランド”mame”毎日ファッション大賞のランウェイなど数々の映像演出を手がける。http://qotori.tumblr.com

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