次の記事 前の記事

Now, Then!

世界サウナ紀行 Vol.3 Destination : Vantaa (Finland)②

2018.06.29

文、写真/大智由実子

イラスト/ほりゆりこ

前回に引き続き、フィンランドの旅は続きます。
初めてフィンランド・ヘルシンキのパブリックサウナに行き道端で外気浴を体験して気持ちよくなってしまった私は、もう怖いもの無しで「極熱のサウナから極寒の湖までなんでもこい‼️」とだいぶ気が大きくなっていました。
 そして次に向かったのが、ヘルシンキに近い郊外・ヴァンターの大自然の中にある、クーシヤルヴィ(Kuusijärvi)というレクリエーション施設。私たちはフィンランド人の友人に車で連れていってもらったのですが、ヘルシンキ中央駅からもバスで30分程で行けます。ここは国立公園のすぐそばにあり、森に囲まれた湖のほとりにある施設で、一番の売りは今では珍しい伝統的なスモークサウナです。スモークサウナとは、2000年以上も前からあると言われている原始的なサウナで、煙突のないサウナ小屋の中でサウナストーンをのせた薪ストーブに何時間にもわたり、絶えず薪をくべ続け、室内に煙が充満し充分に熱くなったところで部屋のドアを細く開け、そして煙を出しきってようやくサウナに入れるという、とてつもなく時間と労力の要るサウナなのです。加えてスモークサウナの準備には安全性を考慮したテクニックも必要とされるので、もちろんそこは施設のスタッフの方がやってくれるのですが、手間ひまかけて暖めてくれたスモークサウナに入れるということ自体が、とっても「ありがたや〜」な体験なのです。

ついに初体験、 本場のサウナといえば!

 さらにドキドキのお楽しみは、サウナ小屋の前に広がる湖へのダイブ!人生初のスモークサウナからの湖ダイブです。
 まずクーシヤルヴィに着いたら入館料を支払い、ロッカーで水着に着替え(スモークサウナは男女混浴なので水着着用必須です)、いざサウナへ!ここには普通の電気式のサウナもあるのですが、電気式サウナはフィンランドには数え切れない程あるので(それこそフィンランド全土には300万近くものサウナがあるのです!)そこはすっ飛ばして、お目当てのスモークサウナへ直行。
 ドキドキしながらサウナ小屋の重厚感のあるドアを開けると、またもや暗い! 前回のコティハルユよりも暗い! さらに室内はどこもかしこもススで真っ黒! そんでもってものすごく熱い! しかもスモークの香りが強烈! 一瞬パニック状態に陥りそうになりましたが気を落ち着かせ、ようやく目が慣れてきてから周りを見渡すと数人の恰幅のよいオジさまたちが鎮座してらっしゃる。しかも隣に座っているオジさまは頭に可愛らしいイチゴの形のハットをのせている。ちなみにこのハットは「サウナハット」といい、頭部を熱から守るために被るフェルト製のハット。サウナ大国フィンランドではみんなこのサウナハットを被っているのかと思いきや、私がフィンランドで実際に被っている人を見たのはこのスモークサウナだけでした。つまり、ここはそれだけ温度が高いということか。特に頭部が寂しくなっているオジさまたちにとって、この極熱のスモークサウナではサウナハットは必需品のようでした。温度計は無かったように思うので正確な温度はわからないけれど、そのオジさまに聞いたところ100℃くらいとのこと……。

 室内はとにかく暑い上、オジさまたちがここでもガンガン「ロウリュ」をして湿度も上げてくれるので、入ってから1、2分くらいでもう汗が噴き出してきます。瞬時に身体が熱せられたので外へ出ていざ! 湖ダイブ! ……と思ったのですが、そのときは初冬のフィンランド、湖はまだ凍ってはいないものの、おそるおそるつま先を入れてみたら冷たいのなんの。1回目の挑戦は怖じ気づき、おとなしく小屋の外のベンチに腰掛けて外気浴をしました。
 2回目にサウナに入ると、アジア人が珍しいのかイチゴハットのオジさまがやたらと話しかけてきてくれました。フィンランドでのサウナの入り方とか、そんなことをずっとしゃべっていたような気がしますが、こちらは暑くてもう汗ダク。話なんて頭に入ってこない。笑顔で応対していましたが、いよいよ熱さに耐えきれず「ソーリー!」と言って外へ飛び出しました。この熱々にグリルされた身体。今なら湖ダイブができる! と思い、一目散に湖へ。でも、いざ飛び込もうとするとかなり勇気が要る。「心臓マヒで死んだらどうしよう…」という思いがよぎり躊躇していると、例のイチゴのオジさまが来て「考えるな!一気に飛び込め!」と、エールを送ってくれるではありませんか。ハシゴを握りしめ思い切って「えいっ!」と肩まで入りました。でもやっぱり冷たい。あと、底が見えないから怖い。すぐに湖から出て、「よくやった!」と喜ぶイチゴのオジさまとハイタッチをして小屋の外のベンチに座っていると……程なくジワジワと恍惚感が訪れてきました。「私、ついにフィンランドで湖ダイブしたよ!」という満足感も加わり、森林の心地よい風に吹かれながら北島康介ばりに「何も言えねぇ…」とつぶやいたのでした。
  実際のところ人生初の湖ダイブは、以前に写真で見たようなカッコいい飛び込みスタイルではなかったけど、サウナビギナーの私にとっては合格点といえるもので、そして手間ひまかけてスモークサウナを準備してくれたスタッフとあのイチゴのオジさまへの感謝の気持ちでいっぱいになったのでした。

Cafe Kuusijärvi

Kuusijärventie 3 01260 Vantaa Finland
TEL:+358 10 322 7090
スモークサウナの営業:13時〜20時

https://www.cafekuusijarvi.fi/english/

クリエイターの紹介

大智由実子

ライター

洋書のディストリビューションを行うMARGINAL PRESSを立ち上げ、世界各国のインディペンデントマガジンやアートブックを日本に紹介。2016年よりサウナの魅力にはまる。趣味は世界のサウナ巡り。サウナ・スパ健康アドバイザーの資格も持つ。
https://www.marginal-press.com/

ほりゆりこ

イラストレーター

1978年大阪生まれ。デザインやイラストの本職のかたわら「大自然と一体化」をテーマに主に関西を拠点に活動するTent Sauna Partyに所属。著書にタナカカツキ(日本サウナ・スパ協会公認)との共著『はじめてのサウナ』がある。また、リトアニアのサウナハットアーティスト、ヴィクトリアからワークショップを受け「TSP式サウナハット」を考案・制作。お気に入りのサウナは「延羽の湯・鶴橋店」
http://tentsaunaparty.com/

もっとみる

こちらもおすすめ