東京喫茶部「Chin Mee Chin Confectionery/真美珍茶室」
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Now, What!

東京喫茶部「Chin Mee Chin Confectionery/真美珍茶室」

2017.07.21

文/小谷 実由

写真/島田 大介

 今回は東京、そして日本を飛び出し、シンガポールにやってきた。海外にも喫茶店のような時が止まった素敵空間があるのだろうかと、知らない国に行くたびに考える。そんなとき現地の友人が連れて行ってくれたのが「Chin Mee Chin Confectionery/真美珍茶室」である。

シンガポールはとても暑い。燦々と降り注ぐ日光と熱気にフラフラになりながら「真美珍」で友人と待ち合わせをした。お店にドアはない。クーラーが冷や冷やと効いているわけでもなく、ただ大きな扇風機が回っていて、お客さんたちの髪をなびかせているだけであった。でも、なぜかその光景が心地よくてすぐに暑さが引いていく。

 シンガポールにはコピというローカルコーヒー文化がある。そして、コピを売るお店をコピティアムと呼ぶ(日本で言う、喫茶店のような感じだろうか)。通常のコピはブラックのコーヒーにコンデンスミルクが入っていてとても甘い。暑い国だから、糖分もより必要なのかなぁ。友人は先に到着してホットティーを飲んでいた。私も冷たい飲み物を飲みたい気持ちを抑え、ここはと思いホットのコピを注文。

シンガポールの人々はこの暑さの中でもあったかい飲み物をよく飲んでいる気がする。飲み物で身体を冷やしたりしなくていいなぁ、見習いたい。そんな呑気なことを考えていたら、お店の入り口にカップケーキがたくさん入った棚のような大きなケースを発見。どうやらセルフサービスで、自分でお皿にのせてテーブルに運んでくるシステムのようだ。私も早速選びに行こう。なんだか学食みたいな気分で懐かしい、日本の喫茶店では感じないまた別の懐かしさだ。

  1962年創業当時から変わらないという独特な雰囲気の店内。壁も床も全面タイル張り、ドアもなければクーラーもなし、あるのはクルクルとせわしなく回る扇風機だけ。奥の厨房は丸見えでお母さんたちがいそいそとコピを淹れている。壁には幻想的な馬の絵や鯉の絵……、一瞬は暑さが引いたものの、やはり汗ばむくらいの熱気とこの空間、なんだか銭湯のお風呂上がりにコーヒー牛乳を飲んでいる、そんな風景をなぜか思い出してしまった。

  シンガポールが暑すぎるとはいえ、こんなノスタルジックな空間に足を踏み入れるのにTシャツに短パンで行くわけにはいかない。友人が送ってくれたお店の写真で外観のブルーの壁がとても印象的だったので、mameのブルーのワンピースを着た。袖がレースの夏仕様、扇風機の風でひらひら揺れていた。奇しくも友人もブルーのワンピース。やっぱりこのお店にはブルーが似合うよね。私はブルーが好き。ブルーが似合う空間はもっと好き。国境を越えて友人になった彼女と、日本でしか実現できないと思っていた喫茶店でお茶をするという行為が異国で、そしてこんな素敵なお店で実現できたことはとても嬉しい思い出になった。

 シンガポール的喫茶店、コピティアム。毎日訪れている常連客と私のような観光客が共存していても、お店の雰囲気や流れる時間はずっと変わらない。それは日本の喫茶店も同じこと、そんなことを思い出したら早く日本に帰りたい!なんて旅の最中1ミリも思わなかったけど、このときだけはなぜか恋しくて帰りたくなった。

クリエイターの紹介

小谷 実由

モデル

1991年、東京生まれ。ファッション誌やカタログ、広告でモデルとして活躍。趣味は純喫茶巡り。「#喫茶部」として、オリジナルグッズを制作するなど、多くの人に喫茶店の魅力を伝える普及活動にも力を入れている。https://www.instagram.com/omiyuno

島田 大介

映像ディレクター

film maker / photographer / Qotori film Inc. 代表。数々のミュージッククリップ・コマーシャルフィルムを演出。小松菜奈主演の短編映画「ただいま。」監督。ダンサー森山開次氏の展覧会、ブランド”mame”毎日ファッション大賞のランウェイなど数々の映像演出を手がける。http://qotori.tumblr.com

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