前の記事 次の記事

Now, What!

時を彫る

2016.08.26

文/大神 崇

大量生産・大量消費の資本主義社会。インターネットやSNSが普及し、日々猛スピードで情報が消費されています。この先、この傾向はますます拍車をかけるのか、もしくは限界が訪れて新たな傾向が生まれるのか。私たちは現在その転換期にいるのではないでしょうか。そんな状況の中、この資本主義社会に対してユニークなアプローチをしているアーティストがいます。

《multiple-roadside tree no.03》2016

金沢21世紀美術館で展覧会「Promenade/プロムナード」を開催しているNerholです。グラフィックデザイナーの田中義久(Ner=練る)と彫刻家の飯田竜太(hol=彫る)によるこのアーティスト・デュオは2007年より活動しており、写真を素材とし、“消費”“生成”“忘却”という資本主義社会が生み出す巨大サイクルの急所を突く紙の彫刻作品を発表しています。彼らが一躍注目されるきっかけになったのは、“Misunderstanding Focus”というポートレートを題材にしたシリーズ。被写体のポートレートを3分間かけて200枚連続で撮影し、それらを印刷して重ねあわせたものを等高線状に切っていくことで生まれたこの立体作品は、被写体の微妙な動きによって生まれる歪みが新鮮な印象を与え、また作品が写真なのか彫刻なのか、ジャンルを超えて多くの議論を呼びました。2013年にVACANTで開催した展覧会「Scene to know」の際に実際に被写体になったことがあるのですが(作品にはなりませんでした……笑)、彼らの制作プロセスを直に感じられたことは貴重な経験でした。 

Nerhol 《ATLAS No.06》2014

ここ数年は海外でも活躍をする彼らにとって、国内の美術館での展示は今回が初。この展覧会では街路樹を素材にし、120枚に輪切りにした木材を撮影して作品を作っています。これまでの作品と異なり、一つの被写体に限定して、カットパターンで50ものバリエーションの作品を生み出しています。また、何十年もの時が刻まれた年輪に着目することで、二重の時間の積層が表れているのもこの作品の特徴です。

今回の企画展はもうじき終了してしまいますが、今後も続くネルホルの活動を通じて、これからの社会について思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

(COVER PHOTO 金沢21世紀美術館「Nerhol Promenade / プロムナード」展示風景)

クリエイターの紹介

大神 崇

ライター/編集者

1984年大阪生まれ。フットボールカルチャーマガジン「SHUKYU Magazine」編集長。原宿のオルタナティブスペースVACANT創設メンバー。企画・編集・執筆など、カルチャーからスポーツまで、ジャンルにとらわれず幅広い活動をしている。
http://takashiogami.com/

もっとみる

こちらもおすすめ