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Now, What!

カラダのシルエット自由自在

2016.06.21

文/呉 佳子

「服にカラダを合わせるんじゃなくて、カラダに服を合わせなきゃ!」。中学生のころ聞いた、訳知り顔の同級生の言葉を折に触れて思い出す。たしかに10代であれば少々ぽっちゃりしてようとも素を活かすのが一番美しいだろう。けれど、体形のゆるみやたるみやいろいろが気になるアラフォーなお年頃の現在、20数年前はキラキラしていた言葉も、もはやきれいごとにしか聞こえなくなってきた。服でプロポーションが整形できるのであれば、その力を借りない手はない! と思うのだ。

そこで気になってくるのが、この秋様々に提案されている極端なシルエットのデザイン。指先をすっぽりと隠してしまうほどの超ロング袖を筆頭に、かなり強調された大きな肩、ちょっとやり過ぎと思えるくらいのボリュームアップしたサイズ感など、もう実際に着る人の体形がどうこうを超えて、服のシルエットそのものを大胆に楽しむべし、という確固たる思いが伝わってくる。

MARC JACOBS

マーク ジェイコブスはオーバーサイズのジャケットにボリュームスカート、さらに超厚底靴を合わせて、重量感のあるスタイルを打ち出した。繊細な刺繍やびっしりと縫い付けられたパイエット、フェザーやファーなど過剰なディテールを調整するかのように、カラーパレットは白、黒、グレーのモノクローム。円形劇場のような丸いランウェイは一面ツヤツヤの真っ白に塗り上げられ、大きなドレスを纏ったモデルたちは、どこか人形劇のお人形のよう。

MARC JACOBS

ド迫力のボリュームならば、エディ・スリマンの最後のコレクションとなったサンローランも見逃せない。モデルの頭と同じくらいの大きさの肩パッドが入っていそうなパワーショルダーが強烈な存在感を放った。大きな肩とは対照的にキュッと締まったウエスト、タイトスカートのボディコンシルエット、カラフル&メタリックな大胆配色は80年代を思わせる。

Courtesy of Saint Laurent

とはいえ、あの時代のイケイケどんどんムードまでもがファッションとともにカムバックするわけではない。当時の大げさなデザインにはセクシーでパワフルな女性たちの自我と欲望が投影されていたが、今季のデザインにはギラギラとした肉食系の印象は不思議と感じられないのだ。

狙っているのは、自分のスタイルを自由に変化させることができるというその自在感。「ワタシの見た目をコントロールするのは、あくまでワタシ」というある意味、知的な思惑が隠れている。

たとえば写真加工アプリを使えば、目の大きさや肌のトーンを自在に変えて自分好みの顔を演出するのはとても簡単。そんな現代だからこそ、服に自分を合わせることで、好みのプロポーションが作れるのだ。

Cover Photo  Courtesy of Saint Laurent

クリエイターの紹介

呉 佳子

ファッションディレクター

資生堂ファッションディレクター
ファッショントレンドの分析研究やトレンド予測を担当。毎季、コレクション取材で世界を飛び回る……だけならカッコいいのですが、家では2児の世話に髪を振り乱す毎日。長男進学につき、ウワサに聞く“小一の壁”の洗礼を受けています。おしゃべりが上手になった2才の長女は最近「はぁー、つかれた!」「腰イタイ〜」と言い出して……。自分の口癖を反省中。

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