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花椿交差点

【MAGA/ZINE】世界のSports Magazineに注目!

2019.07.30

文/岩井希美(代官山蔦屋書店)

写真/古屋徹(メイン写真のみ)

『花椿』2019年秋号の「MAGA/ZINE」コラムにて、注目のスポーツマガジンについて寄稿いただいた、代官山蔦屋書店の岩井希美さんが、本誌に掲載の雑誌についてより詳しく、そして本誌に掲載できなかったけれどおススメの雑誌をご紹介します。

左から時計まわりに『FRANCHISE』、『SHUKYU Magazine』、『RAQUET』

 ここ数年、スポーツをカルチャーとして捉えるインディペンデント誌が急速に盛り上がっています。単なる情報誌ではなく、選手の内面にクローズアップして新たな気づきを与えてくれたり、スポーツ誌とは思えないデザイン性の高さと美しくダイナミックな写真で、それらは「スポーツ」の可能性を確実に広げています。今回は、とくに注目したいスポーツカルチャー誌6冊をピックアップしました。

『SHUKYU Magazine』 

日本のフットボールカルチャーを独自の目線で取り上げるバイリンガルマガジン。

 創刊号の特集は「ルーツ」、2号目は「身体」と、毎号ひとつの関心事をテーマに編集され、それでいてコンテンツの切り口は実に多岐にわたります。世界で最もメジャーなスポーツともいえる、フットボールの奥深さを感じます。そして、この雑誌最大の魅力はとにかく「人」にフォーカスし、ロングインタビューを通して深く切り込むこと。目標に向かって取り組む姿勢、社会に及ぼす影響、デザインや建築の力、医療に関する話題……1冊の内容として豊富すぎるというくらい充実しており、得るものの多い雑誌。
最新号である第7号では、「Jリーグ」をまるごと取り上げています。今シーズンから大物外国人選手の加入や、クリエイティブ部門が設立されBACHの幅允孝(奈良クラブ)氏が就任するなどで沸くJリーグ。1993年に開幕して以来、様々な試行錯誤を重ねながら確実に日本人のフットボール文化を発展させています。フットボールの専門家にとどまらず、情報学研究者で起業家のドミニク・チェン氏やHIGH(er)magazineのharu.氏らの独自の視点を通して、Jリーグやスポーツの可能性を広く論じています。

『SHUKYU Magazine』

『FRANCHISE』

バスケットボールを魅せるショーケース。

 アメリカ西海岸サンノゼを拠点に、世界中を飛び回ってそのバスケットボール愛を広め、雑誌・SNS・イベント等様々なかたちでアートやカルチャーへ昇華させる編集長のJustin Montag氏が指揮を執る雑誌。とても陽気なキャラクターとバスケットボールへの情熱で、出会う人全てとすぐに打ち解けてしまう彼の魅力は、雑誌にもあらわれています。プロ選手の躍動感溢れる瞬間を誌面いっぱいに映しだすことはもちろん、バスケットボールを題材にする気鋭のアーティストや、勝ち負けを争わず純粋に楽しむ街中の人々、はたまたオバマ元大統領や日本のボールメーカー〈TACHIKARA〉まで、あらゆる話題を取り上げます。Justin氏は、バスケットボールを愛する人々のためのショーケースとなりたいという想いから、本業の傍らこの雑誌を創刊。一般的な雑誌よりも大きなサイズ感、厚めでマットな紙質、ページいっぱいにあらわれる鮮やかな写真やイラスト、シンプルかつ控えめにタイプされた文字。五感をフルに使ってバスケットボールの魅力を感じることができます。

『FRANCHISE』

『RACQUET』

アーティスティックな誌面でテニスの魅力を表現する。

テニスはもともとファッション性の高いスポーツではありますが、『RACQUET』はよりグラフィカルな誌面でその煌びやかな一面を表現します。洒落たフォント、鮮やかなイラスト、ユーモアの効いた写真……その全てがRACQUET独特のスタイルを貫いており、雑誌そのものがアート。コレクション欲の疼く雑誌です。
それぞれの号にはゆるいテーマがあり、テニスにまつわる考察を繰り広げています。世界を代表するプロテニスプレーヤーの人生に焦点を当てていることもあれば、テニスシーンが頻繁に登場するスヌーピーでお馴染みの『Peanuts』の作者についての特集もあり、はたまた日本の四国でのテニス風景など世界中のテニス文化について取り上げているページも。それから、テニスを題材にした歴代のゲームソフトを統計するなど遊び心の効いたトピックも豊富です。
この雑誌のおもしろいところは、テニスを通して毎号何らかの人生訓を得られることではないでしょうか。スポーツマガジンとは思えない、深い考察や視覚的なインスピレーションによって、心の栄養を与えてくれる雑誌です。

『RACQUET』

『SEASON zine』 

ファッションとフットボールの可能性、女性たちの革命。

 チェルシーの熱心なサポーターで、大学時代はファッションを研究していたFelicia Pennant氏によるフットボールマガジンです。
 現代のフットボールにおける女性の存在が非常に大きいことはメディアを通して伝わってきますが、なぜ女性たちがフットボールに魅了されてきたのか、そして彼女たちがどのようなライフスタイルでサッカーに向き合っているのか、それは男性メインのフットボールマガジンでは知ることのできない部分です。また女性サポーターにおけるファッションの多様性について(安っぽいユニフォーム姿というステレオタイプからの脱却)、それらは普段テレビやフットボールマガジンを見ているだけでは気付きにくい、いや考えも及ばなかった部分で、このZINEをめくったときにはっと考えさせられます。女子フットボール選手の個性や女性サポーターに対して、私たちは理解を示しているのだろうかと。
 だからこそ、本誌『SEASON』は現代フットボールに対する革命とも言える1冊なのです。

『SEASON zine』

『OOF』  

アートとフットボールの関連性を紐解く。

 フットボールは最もベーシックで多くの人がプレーするスポーツなだけに、現代アートの世界でもしばしば題材として取り上げられてきました。アートが目指す、“人々の心を揺り動かす"ということを、スポーツは簡単にやってのけます。反対に、アートの表現力によってスポーツの深層を解き明かすこともできます。この雑誌は、フットボールとアートの結びつきを探求し、フットボールファンに対し芸術への関心の扉を開ける役割を果たします。よって、専門的な話題はごくわずか。
 号ごとにロゴのカラーが変わり、誌面にもテーマカラーが繰り返されるこだわり、そして展覧会のパンフレットか試合のプログラムのような小ぶりで薄い形状が特徴。
社会問題や情熱、信条、コミュニティなどのメタファーとしてのフットボールを、アーティストや現代美術評論家の視点を通して捉えてみてはいかがでしょうか。

『OOF』

『LIKE THE WIND』

人にフォーカスしたランニングカルチャー誌。

 自身もランナーであるSimon & Julie Freeman夫妻がつくる、ランニングを楽しむ人のための季刊誌『LIKE THE WIND』は、ランニングに関する個人的なストーリーのコレクションによって構成されています。デザインにとことんこだわりイラストも豊富に取り入れた誌面で、走ることの魅力を伝えてくれます。再生紙を使用したサステナブルな製作方法とランニングチャリティへの寄付も、この雑誌の特徴です。

『LIKE THE WIND』

最後に、これらの素晴らしい雑誌が今後も続き、多くの人の人生を豊かにすることを願います。ぜひ手に取り、スポーツの楽しさ、美しさ、面白さを感じてみてください。

クリエイターの紹介

岩井希美

代官山蔦屋書店スポーツマガジン担当。1989年熊本県生まれ。ビジネスホテルに4年勤務後、企画を学びたいという気持ちからもともと好きな空間であった代官山蔦屋書店へ転職。スポーツとは無縁の人生を送ってきたが、今は雑誌(とくに洋雑誌)の魅力にはまっている。
https://store.tsite.jp/daikanyama/

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