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偏愛!資生堂

第36回 蓮沼執太 × 資生堂ギャラリー

2019.10.16

文/蓮沼執太

『蓮沼執太: ~ ing』展示のようす Photo/Ken Kato

1947年、『椿会展』という展覧会がありました。現存最古の画廊といわれる1919年オープンの資生堂ギャラリーが、戦時中一時閉鎖されていた活動を再開するにあたり企画されたグループ展です。70年以上前から続くこのグループ展企画の展覧会『椿会展2017-初心-』(※)が行われました。その2017年、椿会メンバーの島地保武、酒井はなによるユニット「Altneu(アルトノイ)」とのコラボレーション・パフォーマンスでぼくは初めて資生堂ギャラリーと関わらせていただきました。パフォーマンスを終えた後、ギャラリーでじっくりと展覧会を観ました。その際、展示をキュレーションされた豊田佳子さんから作品解説を伺いながらお話ししていたところ、「資生堂ギャラリーは音の響きがわるいんですよ」とボソッと仰いました。ぼくはすぐに「空間と音の関係は多種多様で、そこに良いわるいは無くて、むしろぼくはここの響きは好みです」そんなお返事をした記憶があります。学生時代から足を運んでいたギャラリー、やはりビジュアル、観る側に強く視覚的要素を意識させるスペースではあるものの、馴染みあるギャラリーの"響き"も自然と好きになっていたんだなぁ、と半ば無意識の自分の回答に驚きました。
 翌2018年、ぼくは資生堂ギャラリーで個展『 ~ ing』を開催させてもらう機会に恵まれました。出展作家の一人としてここでクリエーションを重ねることで、この場所の歴史のひとつに加われたような気持ちがあります。場所はその場所の「時間」を持っているように思います。たくさんの人々の場所の記憶が集まり歴史がつくられます。今年で100年という長い時間を持った資生堂ギャラリー、これからも芸術を通して、現代社会に対してさまざまな気づきや発見を与えてくれるような場所であり続けてくれることを期待しています。

※「第七次椿会」メンバーである、赤瀬川原平、畠山直哉、内藤礼、伊藤存、青木陵子、島地保武により、2013年から毎年春に展覧会を開催してきた。『椿会展2017-初心-』が第七次メンバーでの5回目で最後の展覧会。

『椿会展2017-初心-』展示のようす Photo/Naoya Hatakeyama

クリエイターの紹介

蓮沼執太

音楽家

1983年、東京都生まれ。音楽作品のリリース、蓮沼執太フィルを組織して国内外での コンサート公演をはじめ、映画、演劇、ダンス、音楽プロデュース などでの制作多数。近年では、作曲という手法をさまざまなメディアに応用し、映像、 サウンド、立体、インスタレーションを発表し、個展形式での展覧会やプロジェクトを活発に行っている。2013年にアジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)、2017年に文化庁東アジア文化交流史として活動するなど、日本国外での活動を展開。主な個展に『Compositions』(ニューヨーク・Pioneer Works 2018)、『 ~ ing』(東京・資生堂ギャラリー 2018)など。最新アルバムに、蓮沼執太フィル『ANTHROPOCENE』(2018)。『 ~ ing』(東京・資生堂ギャラリー 2018)では、『平成30年度芸術選奨文部科学大臣新人賞』を受賞。

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