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偏愛!資生堂

第33回 倉本美津留 × 資生堂ギャラリー

2019.07.12

文/倉本美津留

アートを突っ込みながら賛美するテレビ番組『アーホ!』を立ち上げたときに、「まさにアーホ!な作品を銀座の資生堂ギャラリーで見ました」と、うちの事務所のアートマニア女子に聞いて早速キャスティングさせてもらったのが、第6回 shiseido art egg賞に輝いた入江早耶さんの作品でした。
アーホ!とは「そんなアホな!」と思わず口に出してしまうくらい既成概念を壊してくれるヤバイ芸術作品を指す私の造語で、入江さんの、絵を消しゴムで消し、出た消しカスでその消した絵を立体作品に変換する、いわば二次元の存在を三次元に連れてくるその表現はまさにアーホ!で、番組でもベストアーホ!賞を授与しました。

第6回 『shiseido art egg』入江早耶作品 Photo/Ken Kato
第6回 『shiseido art egg』入江早耶作品 Photo/Ken Kato

そんなアーホ!な作品を世に出した資生堂さんのキュレーションセンスって一体?!と、俄然興味を持ちました。そして初めてギャラリーを訪れたときに開催されていたのがアートチーム目【め】の展覧会。入り口の階段を降りると、そこは高級ホテルのようなエントランスが。資生堂ギャラリーってなんだか不思議な構造になっているんだなと思いながら、中に入って行くとやはり部屋がいくつもあり、その部屋ごとに不思議なアート表現がなされているというもの。以前から注目していた目【め】の作品群は脳を擽(くすぐ)ってくれる面白いもので、やはり資生堂さんのキュレーションは自分好みだと確認できた。

目【め】『たよりない現実、この世界の在りか』 展示風景 Photo/Ken Kato
目【め】『たよりない現実、この世界の在りか』 展示風景 Photo/Ken Kato

そして、次に訪れたのは「椿会展 2015- 初心 -」。赤瀬川原平さんの見たことのない作品が見ることができるというので楽しみに訪廊してまず驚かされたのは、ギャラリーの構造。なんと、そこはシンプルなアートギャラリー然とした白い壁の仕切りのない四角い空間だったのです。僕は初めて行った展示空間(ホテルの室内的空間)が資生堂アートギャラリーの常設構造だと思い込んでいたのです。あのときはあの空間自体が目【め】の作品だったということをそのときやっと知るに至るという天然ぶりを発揮してしまいました。というか、あの高級ホテルばりの空間を比較的新人と言える一アーティストのために提供するなんて!! 資生堂ギャラリーが一番アーホ!ではないか?!! と大感動してしまいました。

『椿会展2015-初心-』展示風景 Photo/Naoya Hatakeyama
赤瀬川原平『新劇』連載『埋め草』1985-1986 『椿会展2015 -初心- 』より Photo/Naoya Hatakeyama

その後、何度も観覧に訪れ、近々では荒木悠展。彼の作品も完全にアーホ!でした。アートの中のアーホ!な作品に偏愛を抱く僕にとって資生堂ギャラリーは銀座一、偏愛欲を満たしてくれる場所です。

荒木悠『LE SOUVENIRS DU JAPON ニッポンノミヤゲ』展示風景 Photo/Ken Kato

クリエイターの紹介

倉本美津留

放送作家

1959年生まれ。広島生まれ、大阪育ち。『ダウンタウンDX』『シャキーン!』『M-1グランプリ』『浦沢直樹の漫勉』『アーホ!』など、数多くの人気テレビ番組やCM、イベントを手がける。近年では、笑いとアートの交わりをテーマに掲げ、プロデュースした「~アー!!ット叫ぶアート~ 大Ah!!rt展」「ヨコハマアートラリーアートと笑いの境界線」などを主宰。また、現代アートを応援するサイト「これやん」を立ち上げた。著書に『ことば絵本 明日のカルタ』(日本図書センター)、『倉本美津留の超国語辞典』(朝日出版社)『パロディスム宣言 笑い伝道師の名画鑑賞術』(美術出版社)など。
http://ninpop.com/
https://twitter.com/kuramotomitsuru

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