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Heart of Fashion

即興性であらわす今のリアリティ – メゾン マルジェラ

2018.09.04

文/呉 佳子

メゾン マルジェラが最近提唱している「ドレッシング・イン・ヘイスト (dressing in haste)」。直訳すると「急いだ着こなし」、慌てて身支度を整えたようなコーディネートとでも言おうか。たとえば朝、すぐに出掛けなくてはならなくて、偶然目に入ったもの、手に取ったものを急いで身につけたような、偶発的な発想がスタイルに落とし込まれている。アウターの上のキャミソールは、ちょっと足りないフェミニンさをプラスした結果かもしれないし、あるいは単に着る順番に頓着しないだけ(?!)なのかもしれない。

アームウォーマーはペアで見つからなかったのか、片腕のみ。極端にアンバランスなボリューム感が新しい。
トレンチコートがベーシック過ぎてつまらないと思えば、上に青いシースルーのライダース型ジャケットを重ねて色を足す。

秋冬向けに発表されたショウピースは33ルック。限られた作品をショウで見せるからにはコーディネートも相当練られているはずで、“即興的に”、“偶然に”というのは当然演出だ。しかしそういった演出にこだわるのは、現代のライフスタイルのリアルなイメージ、スピード感、型に捉われない自由さをファッションに取り込もうとしているからにほかならない。「コーディネートはこうあるべき」なんてうんちくはお構いなし、「これがルール」と決めつけない寛容さが光った。

コーディネートだけでなく、アイテムの面白さも際立っている。防災頭巾とヘルメット、レインハットを組み合わせたようなかたちのPVC(ポリ塩化ビニル)のヘッドピースや、機能的なスポーツウェアや工事現場の安全服を彷彿とさせるオーバーサイズのジャケット。

それらタフな印象のアイテムを、ホログラム光沢素材やフラッシュの残像のようなプリントの幻想的なモチーフと組み合わせる。テイストをフュージョン(融合)させることでハイブリッドな魅力を表現した。

メゾン・マルジェラをジョン・ガリアーノが手掛けるようになって早4年。毎季送り出すコレクションのラインナップは、もしかしたら日常のワードローブからは少し遠い世界のように見えるかもしれない。が、その誇張された表現で具現化されたコンセプトこそ、私たちがが抱える目に見えない欲求や衝動が映し出された姿なのだ。

クリエイターの紹介

呉 佳子

ファッションディレクター

資生堂ファッションディレクター
ファッショントレンドの分析研究やトレンド予測を担当。毎季、コレクション取材で世界を飛び回る……だけならカッコいいのですが、家では2児の世話に髪を振り乱す毎日。長男進学につき、ウワサに聞く“小一の壁”の洗礼を受けています。おしゃべりが上手になった2才の長女は最近「はぁー、つかれた!」「腰イタイ〜」と言い出して……。自分の口癖を反省中。

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